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キリンのひとりごと
 

「キリンのひとりごと」はオキナワグラフ(新星出版)にて連載されている法律エッセイです。弁護士法人那覇綜合(旧 宮﨑法律事務所)の所属弁護士が交代で記事を毎月執筆しています。憲法のこと、裁判員裁判のこと、沖縄の地域生活など、時節に合わせたタイムリーなテーマをとりあげながら、暮らしに関わる法律のおはなしを分かりやすく解説します。

 
【キリンのひとりごと Vol.25】 「この夏の思い出」(宮﨑政久)
2012年 10月 10日(水曜日) 00:00

 

オキナワグラフ 2010年10月号掲載

 

 今年は、ことのほか暑い夏でしたね。気象庁が観測を取り始めた1898年(明治31年!)から百十三年間の観測史上もっとも暑い夏だったそうです。とりわけ沖縄よりも本土各地のほうが暑さにやられているようで、最高気温が38度って体温を超えているわけで、息をするのも苦しい暑さでしょ。そんな暑い暑い日本列島の報道に接していることで私たちの暑さがさらに増しているように感じたのは、私だけではないはずです。
この夏最大の思い出といえば、興南高校の甲子園春夏連覇ですね。歴史に残る快挙。強かったですね。もう十月だというのに昨日のことのように思い出されます。高校野球としては別格ともいえる強さは、我喜屋監督の卓越した指導力、それを忠実に実践し、日々成長し進化を続けた生徒たちがともに築き上げたものでしょう。
 かくいう私も未だに草野球に興じる万年野球少年ですから、興南高校の快進撃にはじっとしていられず、東海大相模との決勝戦には甲子園に駆けつけ、アルプス最前列で声を張り上げていました。
 試合前、興南高校の選手がグランドに姿を見せるや、アルプスはもちろんのこと、外野席からもバックネット裏からも大歓声と指笛が飛び交いました。その中、彼らは手にしていたグローブをグラウンドに置き、外野でのアップに入ります。選手たちが外野のファールゾーンに置いたグローブは、一列に、同じ向きに立てられ整然と並んでいました。選手たちがグローブを置いたのはほんの一瞬のこと。誰が声をかけるでもなく、もちろん選手自らが自分のグローブを置いただけのこと。何事もなく当然に整然とグローブが置かれてアップが始まりました。
グローブをきちんと並べるというのは、少年野球を始めた最初の頃によく指導されることです。
ただ置くだけでなく、ただ並べるだけでなく、手を入れる向きを同じにして、きちんと一列に立てます。今使わないグローブが練習の邪魔にならないように、次にグローブを使うときに、スムーズにグローブに手を入れて次の動作に入れるように、全員のグローブが、同じ向きにピシッとコンパクトに並べて置かれるように指導されます。しかし、これを徹底することは難しいものです。一箇所にまとめてグローブを置くことはしても、同じ向きに立てて並べるのは、なんか初心者っぽくて気恥ずかしいようになってしまうものです。それを、興南の選手たちは自然と実践している。しかも甲子園の決勝戦前のアップでも。
我喜屋監督の言葉に、「野球は約束事の多い競技だから・・・」というのがありました。まさに小さな約束事をやり続けるところから大事につながるんだなあと、試合前に感心しました。
試合中のアルプスがお祭り騒ぎなのも沖縄県代表の特色でしょう。反対側に陣取る相手チームのアルプススタンドは、こちらから見ても整然としていて、統率のとれた一糸乱れぬ応援というのがよくわかります。片や我が方といえば、ブラスバンドや興南高校の選手、父母会、生徒、関係者の席を別にすれば、もうお祭り騒ぎ一色です。試合展開がワンサイドになって畳み掛けるようになったこともありますが、大きな声と指笛が嵐のように球場を包んでいきました。アルプスに入りきらなかった興南を応援する人たちが、外野席からも内野席からも声を上げ、手拍子を取っているのが分かり、うれしかったものです。優勝決定後には、観客席のウエーブが、両校応援席を通って2周も続いたのは、夏の甲子園を最後まで沸かせた両校へのエールだったのでしょう。
 この夏には、県内で「美ら島沖縄総体」も開催されましたね。「晴天届く君の風 みなぎる闘志が夏に輝く」のスローガンで、こちらも熱気にあふれていました。私の住んでいる那覇の新都心でもテニス競技が行われていたので見に行きました。団体戦でしたから同じ学校の仲間も声をあげて応援していて、大人の試合とは違った高校生らしさがあってよかったですね。コートの周りでは、負けて涙にくれている生徒たちもいました。この一瞬のために精一杯の準備をし、真剣に勝負に立ち向かった者だけに与えられる涙や胸にこみ上げてくる思い。これからの人生でも、きっと自分を支えてくれる糧になります。どうかその思いを忘れずに、また次の一歩を踏み出して欲しいものです。
でも、興南ナインを見つめる県民のまなざしは、宮里藍ちゃんが国内ゴルフツアーで優勝し、全国区で活躍し始めた頃、県民みんなが、藍ちゃんのことを親戚の子のように思って、子供の頃からの頑張り屋さんのエピソードやお父さん(宮里優さん)の指導の素晴らしさを語っていたのと似ています。島の子供たちの活躍に県民が一体となって応援し、その結果を自分の事として喜びあう。いいなぁ、愛ですよね。
 

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