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キリンのひとりごと
 

「キリンのひとりごと」はオキナワグラフ(新星出版)にて連載されている法律エッセイです。弁護士法人那覇綜合(旧 宮﨑法律事務所)の所属弁護士が交代で記事を毎月執筆しています。憲法のこと、裁判員裁判のこと、沖縄の地域生活など、時節に合わせたタイムリーなテーマをとりあげながら、暮らしに関わる法律のおはなしを分かりやすく解説します。

 
【キリンのひとりごと Vol.24】 「法教育ってなあに」(野崎聖子)
2012年 9月 10日(月曜日) 00:00

 

オキナワグラフ 2010年9月号掲載

 

 「法教育」という言葉を聞いたことはありますか?
 「法教育」とは、法律の専門家ではない一般の人々が、法の基礎になっている価値を理解し、法的なものの考え方を身につけるための教育といわれています。
これまでも、一般市民や子供向けに、「人権教育」とか「消費者教育」といった法律に関する学習の場がたくさん提供されてきました。「法教育」は、そのようなこれまでの法律の知識面を重視したものとは異なり、身近な素材をテーマにして、グループ討論などを通じて実際にルール作りに挑戦したり、紛争を解決したり、契約書を作成するなどして、他人の異なる価値観に触れ、ルールの必要性を理解し、自分の意見と他人の意見を公平に理解する能力を養い、紛争解決のための技術を身につけることなどを目的としています。
実は、私も最近まで「法教育」という言葉すら知らなかったのですが、ひょんなことから、日本弁護士連合会(弁護士の全国的な組織)の「市民のための法教育委員会」が取り組んでいる「法教育」に関わるようになり、日常の弁護士業務の合間に、少しずつ法教育についての勉強を始めたところです。8月7日には、その法教育委員会のお仕事の一環で、東京・大阪・福岡・香川で開催された高校生模擬裁判選手権にスタッフとして参加し、高校生による甲子園さながらの熱い戦いを目の当たりにしました。
そこで今回は、中学生向けの法教育の教材を一つ簡単にご紹介します。みなさんも、ご家族や職場の方々と仮想のルール作りや紛争解決をしてみませんか。
まず、具体的な事例を検討する前に、世の中のルールは何のためにあるのかを考えてください。そして、次の具体的事例について検討してみてください。
 
 
(事例) 
 那覇市の静かな住宅地の中に24時間営業のカラオケボックスができました。小学生からお年寄り、主婦にサラリーマンなど、多くの人が利用し繁盛しています。しかし、次の問題点が出てきました。
①深夜になってもうるさい。歌声が住宅地にひびいている。
②中高生が深夜も利用している。
③酒に酔った人が疎とで騒いだり物を壊したりしている。
 
 
この問題を解決するために、町内会の人が集まって話し合いをしています。
 
 
<カラオケ店店長> 
    最新の機械で音の大きさが好評。学割制度で中高生も利用。フリードリンク制を入れるなど、儲けるためのアイディアをもっている。
<中学校PTA会長>
    中学でもカラオケボックスは問題になっている。中学生の夜遅くまでの利用に反対。自分の娘のことも心配。
<宮崎政久>
    カラオケ大好きサラリーマン。大きな音を出さないと気が済まない。ほとんど毎日歌って家に帰る。週末は深夜から明け方まで歌いまくる。
<コンビニ店店長>
    向かいのコンビニ店店長。カラオケボックスの客がよく利用し売上倍増。でも、酒に酔った客が店の前で騒いだり看板を壊される等の被害を受けている。
<伊東幸太朗>
    カラオケボックスの隣に住んでいる。深夜の騒音に悩まされている。ちなみにカラオケ嫌いでカラオケボックスに行ったことが無い。
<野崎聖子>
    カラオケ大好きの高校生。アルバイトの帰りによく利用し、盛り上がると11時過ぎまで歌っていることがある。迫力のサウンドがお気に入り。
 
 
さて、この6名の登場人物、それぞれどのような言い分があるでしょうか。それぞれの立場からの言い分を考え、問題を解決するための町内会のルールを考えてみてください。
どうですか?
中学生向けの教材とはいえ、大人がグループ討論をする場合にも使える素材だと思いませんか。酒の席でそれぞれの役割を割り当てて自由に議論するのもおもしろいかもしれません。
世の中は、さまざまの立場でそれぞれの意見をもった人がいます。しかし、みんなが自分の言い分だけを通そうとすれば利害が衝突してしまいます。そのため、お互いの利害を調整して秩序を維持し共存・共生するため、また発生する紛争を解決するためにルールがあるのです。そして、そのルールは、みんなが納得して守れるような公平で平等なものでなければなりません。
裁判員制度が始まってから1年が過ぎ、刑事裁判が市民にも身近なものになってきたと実感することが多くなりました。ただ、「法」は刑事裁判だけではありません。むしろ、一般の市民の生活は民事法によって規律されており、みなさんも日々無意識のうちに法律に接して生活しているのです。
県内の小中高校の先生方、「法教育」に興味をもって頂けたらご連絡ください。
 

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