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キリンのひとりごと
 

「キリンのひとりごと」はオキナワグラフ(新星出版)にて連載されている法律エッセイです。弁護士法人那覇綜合(旧 宮﨑法律事務所)の所属弁護士が交代で記事を毎月執筆しています。憲法のこと、裁判員裁判のこと、沖縄の地域生活など、時節に合わせたタイムリーなテーマをとりあげながら、暮らしに関わる法律のおはなしを分かりやすく解説します。

 
【キリンのひとりごと Vol.23】 「事業仕分を考える」(宮﨑政久)
2012年 8月 10日(金曜日) 00:00

 

オキナワグラフ 2010年8月号掲載

 

 先月に続きまして、「事業仕分け」について触れてみたいと思います。
 この本が発売される平成22年8月には、前月に実施された沖縄県における「県民視点による事業棚卸し」が終了しています(本稿執筆時は実施前です)。3日間で百事業を対象とした棚卸しがどのような反響を得たのか、楽しみなところです。
 ところで、この「事業棚卸し」、皆さんには「事業仕分け」の方が聞き覚えのある言葉だと思います。政府が行った事業仕分けでは、蓮舫議員の「2位じゃだめなんでしょうか?」発言もあって、社会的に大きな注目を集めたものです。
 我が国における事業仕分けは、シンクタンク構想日本が平成14年から全国の地方自治体と一緒になって始めたものでした。当初は行政の役割や国と地方の役割の定量化を示して、地方自治体がやるべき仕事に対する国の関与や規制を洗い出すことを目的としていました。
仕分けを通じて全体像が見えてくるようになり、現在では、個々の自治体の行財政改革に貢献するよう、仕分けの成果が歳出削減などで予算に反映し、事業の評価システムを見直すことにつながるようにしています。
 実際に事業仕分けをしてみると、都道府県では不要もしくは民間実施となる事業は10%、市町村や国(つまり他の行政機関)が行うべきとする事業は30%、残りの60%は引き続き実施すべきとなり、この結果は自治体によって変動は少ないということです。いかなる事業であっても始まる時から意義のない事業は存在するはずもなく、全事業の1割がカットされるというのは実際には大きな効果だといえます。
 また、国の関与や規制によって自らやるべき仕事の内容を自主的に決められない事業が多いこともわかります。その典型は土木事業です。
 長野県栄村で国の基準による場合と村独自に実施した場合のコストを比較した資料があります。国の基準に沿った道路を建設する場合には、道路の幅員、アスファルトの深さなど定められた補助基準の通りに施工することが求められます。それゆえ、その場合の負担は道路1メートル当たり十一万千円となりますが、栄村が独自に道路を作った場合には一万九千円で済みます。そのコストは5.8倍にもなります。同じく農地整備も、国の基準により実施すると、栄村が独自に実施した場合の4.5倍ものコストがかかることが判明しました。
さらに進んで、長野県下條村では、村役場が道路資材や重機の燃料代を提供し、村民が集落や区単位で村職員と共同して道路整備工事を自ら行うようにしたところ、その費用は道路1メートル当たりわずか三千円で済んだそうです。そればかりか、村民相互に自分たちの村は自分たちで作り、管理する自助、互助の精神が芽生えるという、まさに地方自治にふさわしい成果がもたらされたということです。
国における事業仕分けは、平成21年の政権交代を受けた後の民主党による専売特許のような印象がありますが、実は今をさかのぼること5年前、平成16年のいわゆる郵政解散の総選挙の際に、公明党と民主党がマニフェストに取り上げたことがきっかけでした。その後、小泉純一郎首相が国会で国の事業仕分けを行うと明言し、与党財政改革・事業仕分けに関するプロジェクトチームが立ち上がりました。その後、平成17年に行政改革推進法が成立し、その中で特別会計改革と公務員の総人件費改革において仕分けを実施すると定められるという経緯をたどっており、事業仕分けは、実は自公政権のもとではじめられたものでした。
事業仕分けもそれ自体「事業」であって、どんなに優れた事業であっても、人々に共感とよい影響を与えることができなければ、その効果は十分ではないといえます。「事業」としての事業仕分けは、民主党のもとで行われた方法に一日の長があったということでしょう。
その大きな効果は、国民の税金の使われ方が適切であるかを衆目のもとで検証し、結果として無駄の削減が出来たという直接的な効果があったことはもちろんですが、それ以上の効果も見逃せません。ひとつは、国民が、税金の使われ方、税金が使われるプロセスを知ったこと。これまでの「情報公開」では果たせなかった、国家と国民の情報共有が実現したことです。もうひとつは、行政に携わる公務員が説明責任を求められたことを契機として、行政マンの問題意識を高めたこと。組織の内部からでは問題提起されにくい、事業そのものの必要性を検証するきっかけとなるとともに、外部からの質問に的確に答えられる訓練を経て、行政マンと行政組織のボトムアップが実現していることは見逃せない成果です。
今後とも、事業仕分けが地方自治体でも国においても大いに成果を上げることを期待してやみません。
 

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