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キリンのひとりごと
 

「キリンのひとりごと」はオキナワグラフ(新星出版)にて連載されている法律エッセイです。弁護士法人那覇綜合(旧 宮﨑法律事務所)の所属弁護士が交代で記事を毎月執筆しています。憲法のこと、裁判員裁判のこと、沖縄の地域生活など、時節に合わせたタイムリーなテーマをとりあげながら、暮らしに関わる法律のおはなしを分かりやすく解説します。

 
【キリンのひとりごと Vol.22】 「沖縄県の「事業棚卸」」(宮﨑政久)
2012年 7月 10日(火曜日) 00:00

 

オキナワグラフ 2010年7月号掲載

 

仕分け人 妻に比べりゃ まだ甘い
今年のサリーマン川柳コンクール第一位の作品です。
「事業仕分け」は、昨年の流行語大賞にも選ばれ、社会現象といえます。
政府の事業仕分けは、功罪いろいろと語られていますが、これまで国民の目にふれることのなかった予算編成の内実やその背景までを目に見える形にしたこと、そしてワイドショーでも取り上げられるほどに国民の注目を集めたことが、大きな成果であることは間違いありません。流行語大賞や川柳に反映するほど身近になっているのですから。
 「仕分け」が身近になったことは、国民の政治参加意識を大いに高めたといえます。
 私たちはこれまで自分たちが納めた税金の使われ方について、細かいところまでチェックする意識が乏しかったといえます。それは、高度経済成長を支える中央集権体制を推進するにあたっては官僚による集中的かつ専門的な行政の運営が必要とされており、反面、国民も行政を監視する余裕がなく、かつ右肩上がりの高度経済成長期には、政治家や官僚が税金の無駄遣いをしても、国家財政が破綻するような危機的状況にはなかったという背景があったと思います。
しかし、低成長時代となり、国家の財政にも私たちの将来にも不安があり、財政や税金の使われ方について放置する余裕がなくなったといえます。自分の家庭や会社と同じように国においても税金の使われ方に関心をもち、官僚や政治家に任せきることのないよう監視する、そんな時代がきていると思います。
「事業仕分け」が盛大に行われることは、情報公開が進み、透明性が確保され、税金を使う側が国民に対する説明責任を果たすようになるという効果をもたらしています。それが、ひいては、私たちの政治への参画意識や社会の成熟が進む大きな一助となると思っています。
 さて、私たちの沖縄県の財政はどのような状況なのでしょうか。ここに沖縄県総務部が平成20年6月に発表した「沖縄県の財政状況」というリーフレットがあります。図表も豊富にわかりやすい資料です。ちなみに、これは、沖縄県のホームページで誰でも閲覧することができます。
 この資料によると、県の財政は地方税等自主財源の割合が小さく、国庫支出金に依存するぜい弱な構造であること、人件費の割合が高く硬直化していること、地方交付税が大幅に抑制される一方で社会保障関係費の負担は増えて基金が大幅に減っていることが示されています。極めて厳しい財政状況は、例えば平成20年から23年度の4年間で収支の不足が千二百六十億円にもなることに現れています。人件費カットなどの努力をしても五百二十六億円は起債、つまり借金でまかなわざるを得ず、将来へ負担を先送りせざるを得ないわけです。しかも、起債をした借金の返済費用(公債費)は年々上昇を続け、なんと平成28年度には税収と同程度の金額になることが予想されています。家庭にたとえれば、給料でもらってくるお金の全額が借金の返済にあてられてしまうということで、もう待ったなしの状況です。
 そこで、県では行財政改革を進めており、平成22年4月から新たなプランが始まりました。そのサブタイトルが「県民とともに将来世代に対する責任を果たすために」。これまでも行財政改革を進めて県庁での無駄を省く努力はしていたでしょう。そして、これからもその努力は必要です。しかし、もはや県庁や県庁職員だけでは無理があるのでしょう。それはそうでしょう。改革とは聞こえはいいですが、痛みが伴います。県庁の無駄の削減をするにあたって県庁内部でやるには限界があるのは当然です。
 そして、もっと大切なことは、県民自ら、みんなの税金を使って県が行うべき事業とは何かを考えることです。なんでも税金でやってくれるなら今日お財布からお金を出す必要はなくなります。なんでも行政や県がやってくれれば、それは楽でしょう。しかし、私たちの税金も行政資源も限りがあります。将来のことまで考えれば大いに不足しているのが現実です。私たち県民が、自分のこととして、どこまでをみんなの税金を使ってやるべきことか、どんなことは行政にやってもらうのが適切で、どこからは県に頼るべきでないのかを真剣に考える時期に来ているのです。それこそが「県民とともに」行財政改革を進めるということであり、私たちが「将来世代に責任を果たす」ということでしょう。
 沖縄県では、事業仕分けの沖縄版である「事業棚卸し」を7月21日から23日までの3日間、県庁講堂で実施します。
 また、これに先立ち、政府の事業仕分けを担当する行政刷新会議事務局長であり、我が国に事業仕分けを広めたシンクタンク構想日本の代表、加藤秀樹氏の講演会「事業仕分けの意義と生かし方」が7月12日に実施されます。

 

「棚卸し」も講演会もいずれも入場無料で誰でも入れるとのこと。このように県民に情報とさまざまな知識を提供してくれる積極的な取組みは、私も大いに評価し、注目しています。
 

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