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キリンのひとりごと
 

「キリンのひとりごと」はオキナワグラフ(新星出版)にて連載されている法律エッセイです。弁護士法人那覇綜合(旧 宮﨑法律事務所)の所属弁護士が交代で記事を毎月執筆しています。憲法のこと、裁判員裁判のこと、沖縄の地域生活など、時節に合わせたタイムリーなテーマをとりあげながら、暮らしに関わる法律のおはなしを分かりやすく解説します。

 
【キリンのひとりごと Vol.21】 「家族と親子と法律と」(宮﨑政久)
2012年 6月 10日(日曜日) 00:00

 

オキナワグラフ 2010年6月号掲載

 

  「家族」を辞書でひきますと、親子、夫婦など、血縁や婚姻関係で結ばれ、生活を共にする人々、とあります。

 家族に関することは、法律でも多々扱われていますが、この「家族」というのは、法律で定義が明確に定められている用語ではありません。現に、私の手元にある有斐閣『法律学小辞典』をひいても、「家族」制度、「家族」手当などはありますが、「家族」それ自体は示されていません。家族法という言い方もありますが、家族法という名の法律があるわけではありません。これは、民法の親族法と相続法を総称して用いられている用語です。ちなみに、これは、親族や相続という身分に関連することを定めていることから、身分法と呼んでもよいようなものですが、戦後、家制度が廃止されたばかりの時代に、身分という言葉が封建的身分制度を連想させるので身分法ではなく家族法と呼ぶようになったそうです。
 というわけで、法律は、自分にとってどこまでの範囲の人が家族であるかを定めていないのです。そこで、家族の最小単位である親子について、少し考えてみましょう。
民法では、親子について、血のつながりのある実親子と養子縁組によって成立する養親子の2つを定めています。
民法はなぜ親子関係について明確な定めを置いているのでしょうか。
ひとつは、未成熟の子は誰かが面倒をみないと生きることができず、人間に限らず動物でも未成熟子の養育は親のつとめであることから、これを法的な義務にまで高めて、誰が養育義務者かを確定したということです。
また、親とされる者が死亡した場合に、その財産の相続人を定める目的もあります。私有財産制度のもとでは、世代間の財産承継の秩序を保つことはきわめて重要です。そのためには、子が相続人となって財産を承継するとともに、その承継者である親子関係が法的に決定していることが不可欠になります。
さらには、親子関係の連鎖で血族、親族という広がりができます。相続や扶養を円滑に進め、状況によっては権利者・義務者を定めるべき必要もありますから、その基礎となる法律的な親子関係がはっきりしている必要があるわけです。
親子であることの重要な効果といえば、未成年の子に対する親権です。
一般的に、親権とは権利ばかりでなく義務も伴うなどと言われますが、親子の関係を権利と義務の関係で考えようとするからこのようなもってまわった言い方をすることになるのです。子供が他人に迷惑をかけるようないたずらをしたら、親はこれを叱り、ときにはぴしゃっと手を出します。これを法的に考えて、親が子に対していたずらを禁止する権利を有し、子は親に対していたずらをしない義務を負うと考えたりしませんよね。教育だって、親が子に教育する権利があり、子供は義務を負うというものでなく、親は自分の子供を適切に教育する義務があると考えます。親権とは、権利というよりは、親が負う社会的責任とでもいうものです。
言い換えれば、親となった者が子供や社会とどう向き合うかという命題への回答だと思います。
私は、社会との関係でいえば、親にとって子供は社会からの預かりものだと考えています。だから、子供にきちんと躾をし、教育をして、成人になったら社会の役に立つように育てて、いつの日か我が子を社会にお返しするのです。そのときまで、つまり子供が成人に達するまで、親となった者が社会に対して負っている責任を、法律の世界では親権と称するのだと考えています。
さて、親権の内容を分類してみても、やはり社会的な義務という側面があります。
まずは、身上監護権。民法八二〇条に「親権を行う者は、子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う」と定められています。子供が立派な大人になるために、親は、子供を日々監督し、保護し、精神的にも発達できるようにしっかりと教育するということです。
二つめは、財産管理権。ただ、我が国では未成年の子が大きな財産を持っていることがあまりないため、それほど大きな意味がある訳ではありません。
三つめには、子供の生活費や養育に関する経済的な負担をすること、すなわち扶養をする義務です。民法では、親子は互いに扶養の義務があると定めています。
このように親子について法律の定めはあります。しかし、出来ることであれば、法律で規律するのではなく、社会に生きる者としての自覚と責任で社会が成り立つことを望むばかりです。親となったことで、人は社会に対して大きな責務を負います。個人的な世界で完結なんかしません。人間は社会の中で生きていくものであり、我々ひとりひとりが、自分の生きる社会を創り上げているからです。
親として、大人として、社会人として、自覚をもって子供と接して生きていきたいと自戒しています。
 

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