トップ キリンのひとりごと 【キリンのひとりごと Vol.20】 「憲法あれこれ」(宮﨑政久)
キリンのひとりごと
 

「キリンのひとりごと」はオキナワグラフ(新星出版)にて連載されている法律エッセイです。弁護士法人那覇綜合(旧 宮﨑法律事務所)の所属弁護士が交代で記事を毎月執筆しています。憲法のこと、裁判員裁判のこと、沖縄の地域生活など、時節に合わせたタイムリーなテーマをとりあげながら、暮らしに関わる法律のおはなしを分かりやすく解説します。

 
【キリンのひとりごと Vol.20】 「憲法あれこれ」(宮﨑政久)
2012年 5月 10日(木曜日) 00:00

 

オキナワグラフ 2010年5月号掲載

 

 5月3日は憲法記念日です。日本国憲法は、昭和21年11月3日に公布され、昭和22年5月3日に施行されました。

国民の祝日について定めている法律、その名も国民の祝日に関する法律では、「国民こぞって祝い、感謝し、記念する日」を国民の祝日とするとしています。その中で、憲法記念日は「日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する」日としています。日本国憲法が公布された11月3日は、「自由と平和を愛し、文化を進める」日として、文化の日とされています。国民の祝日を休日とすることを定めているのも、この法律なんですよ。
5月にはほかにも国民の祝日がありますね。5月4日みどりの日は「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」、5月5日こどもの日は「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」ための日です。
知っていましたか?子供の日は、産んでくれた母に感謝する日でもあるのです。そういえば、母の日も同じ5月の第2日曜日。5月はお母さんに感謝する月間と心得ましょう。
 少し調べてみたところ、アメリカは合衆国憲法が制定された1787年9月17日に由来して、9月17日が憲法記念日となっています。お隣の韓国は、1948年に大韓民国の憲法が制定された7月17日が制憲節(憲法記念日)となっています。
 憲法とは何でしょうか。正式名称は日本国憲法といいます。簡単に言えば、国の治めるにあたっての基本、根本を定めた法のことです。国を治めるにあたって、国の成り立ちやこの憲法を定めた経緯を記載し、国民の権利・義務、国家機関の構成や権限、その行使方法を定めています。また、憲法は国内の法秩序の最高峰となって、法律以下法体系全体の統一をはかるものとしています。
 単に憲法という言葉を用いた決まりであれば、我が国には聖徳太子が制定したとされる十七条憲法があります。「和をもって貴しとなし、さからうこと無きを宗とせよ」から始まる冒頭は有名ですね。この後には、「上の者も下の者も協調、親睦の気持ちで議論すれば、おのずから物事の道理にかない、どんなことも成就する」と結ばれています。
  憲法は歴史とともに作られてきたものです。特に、近代ヨーロッパにおいて、貴族などによる非民主的な政治体制(アンシャン・レジームといいます。ベルサイユのばらの世界です。)を打倒するために、国家権力の集中・専横を防ぎ、広く国民の権利を保障する内容であることが憲法の条件だという考えが産まれました。1789年のフランス人権宣言でも「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社会は、すべて憲法をもつものではない。」と定められています。これは、もともとアンシャン・レジームを打倒するためのイデオロギーでしたが、その後、権力は集中するのでなく分立していることで相互に牽制や抑制も働き、人々の権利が不当に侵害されるのを未然に防ぐことができて優れているとの考えは、ヨーロッパ以外の文化圏にも広がり、その後普遍的なものだと考えられるようになって、現代では多くの国で受け入れられているものです。
 さて、日本国憲法は、憲法第13条「すべて国民は、個人として尊重される。」に示されている個人の尊厳の原理を中核に置いています。個人の尊厳は個人とその人格を尊重することをいい、個々人の幸福をはかるために憲法はいろいろな手段を講じているのです。具体的には、憲法では、基本的人権を尊重するとともに、そのために国民は自由で平等であることを定めています。個々人の考えを政治に反映するための制度として民主主義や国民主権を定め、統治にあたっては、国家の権力が集中することなく分立されて(三権分立)、相互牽制から不当な人権侵害を防ぎ、すべてを確保するために平和が前提となると考えるのです。
 憲法は個人を尊重し、個々人の幸福を求めていますが、利己主義や自分のためなら他者に危害を与えることを認めるものではありません。憲法第13条も先の部分に続けて、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」と定めており、「公共」つまり、みんなのために調整が必要となることを念頭に置いています。
 もうひとつ大切なことがあります。憲法は国の成り立ちをふまえて、国家の統合と基本的な秩序を定めているということです。日本国憲法第一条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」としています。国家と国民統合の根本が揺らいでは、人心も安定を欠き、「国」を維持することはできません。オリンピックや海外旅行にでも行かないと「国」を意識することは少ないのですが、紛れもなく私たちは日本という国の国民です。私たちが生きるこの国の根本を定めているのが憲法なのです。

PDFファイルはこちらをご覧ください