トップ キリンのひとりごと 【キリンのひとりごと Vol.17】 「裁判員裁判について」(伊東 幸太朗)
キリンのひとりごと
 

「キリンのひとりごと」はオキナワグラフ(新星出版)にて連載されている法律エッセイです。弁護士法人那覇綜合(旧 宮﨑法律事務所)の所属弁護士が交代で記事を毎月執筆しています。憲法のこと、裁判員裁判のこと、沖縄の地域生活など、時節に合わせたタイムリーなテーマをとりあげながら、暮らしに関わる法律のおはなしを分かりやすく解説します。

 
【キリンのひとりごと Vol.17】 「裁判員裁判について」(伊東 幸太朗)
2012年 2月 10日(金曜日) 00:00

 

オキナワグラフ 2010年2月号掲載

  

 裁判員裁判とは?
 
この記事を読んでいらっしゃるあなたはもしかして裁判員ですか?裁判員候補者でしょうか?

 昨年5月から始まった裁判員制度。沖縄でも昨年12月に初めて裁判員裁判が開かれました。1月にも2回開かれ,今月以降も開かれます。

 裁判員裁判とは,一部の刑事事件について,一般市民から選ばれた裁判員6名がプロの裁判官3名とともに裁判をする制度です。裁判員は裁判官と同じ立場で事件を見て,自分の頭で考えることになります。裁判長はプロの裁判官が行いますし,判決もプロの裁判官が書きますが,何が正しいのか,有罪なのか無罪なのか,懲役何年にするべきか,執行猶予にするべきかなどは,自分で考えて意見を言わなければなりません。
 裁判員裁判の対象となる事件は,殺人事件や放火など重大事件と言われる事件ばかりです。ですから,自分の意見が被告人の人生に大きな影響を与えることになりますし,被害者にとっても大きな意味を持つことになります。
 このように説明すると,「裁判員になるのは怖い」,「自分にはできない」と尻込みしてしまうかも知れません。しかし,そのような純粋な感覚こそが重要なのです。裁判員裁判制度は,これまでの裁判が一般市民の感覚からかけ離れているのではないかという疑問から,一般市民の感覚を取り入れるために始まったものですから,一般市民の感覚をもったままで裁判員として参加することが求められているのです。
 
裁判員に選ばれたら
 
 裁判員は基本的に20歳以上の一般市民から無作為に選ばれます。毎年,裁判員候補者名簿が作られ,裁判員候補になった人には,裁判員候補になったことが年末に通知されます。裁判員候補者になったという通知だけでは,まだ裁判員になったわけではありません。私の知り合いにも通知が来たらしく「俺も裁判員様だからよ。」と冗談を言ったりしていましたが,あくまでも候補者です。
 裁判員対象事件が発生し,被告人が起訴され,裁判の日取りが決まると,裁判員候補者のなかから更に40名程度の人が無作為に選ばれて,裁判の日に裁判所に出向くよう求められます。出向けば日当が貰えます。遠隔地の場合には,交通費や宿泊費も出ることもあります。ただ,この段階でもまだ裁判員ではありません。
 裁判所から呼ばれて裁判所に出向くと,呼ばれた40名程度の人の中から,事件と関係していないかなどの確認が行われ,最終的に裁判員6名と補欠裁判員が選ばれ,晴れて裁判員となります。
 
裁判の始まりから終了まで
 
 裁判員となったら,続いて裁判が始まります。裁判員もプロの裁判官も事前には,一切事件記録を見ることはできません。裁判が始まって初めて記録を目にすることができます。先入観を持って裁判をしないようにするためです。
 裁判員裁判では,今までのような書類で行う裁判ではなく,実際に目で見て耳で聞いて裁判をすることになります。どんな事件なのか,どんな証拠があるのか,被告人はどんなことを言っているのか,被害者はどう感じているのか,すべて法廷で明らかにされます。裁判員はこれらすべて法廷で見聞きしたことをもとに,罪と罰を決定するわけです。
 判決は,裁判官と裁判員が全員で集まって意見を述べた上で,全体の意思として出されます。先入観のない裁判員と裁判官が,まっさらな状態から事件を見て意見を出し合うことが重要です。話し合って全員が同じ意見であればもちろんそれが裁判所の意思として表明されますが,話合いを尽くしても意見がまとまらない場合には多数決となります。他人の意見がどうであったかはもちろん,自分の意見がどうであったのかということも公表してはいけないことになっています。話合いの過程が外に漏れる心配はありません。だからこそ自由に話合いができます。
 話合いによって結論が決まると,裁判官が判決を書き,法廷に戻り判決して終了となります。
 裁判所に呼ばれて判決まで,短い場合には2,3日で終了します。逆に,検察官と弁護人が真っ向から争っているような難しい事件の場合には,何日も参加しなくてはならない場合もあります。
              
 実は,私も1月に裁判員裁判の弁護人として活動しました。
 来月号では,私が担当した裁判員裁判事件について,差し障りのない範囲で皆さんにご報告したいと思います。
 楽しみにしていて下さい。

PDFファイルはこちらをご覧ください