トップ キリンのひとりごと 【キリンのひとりごと Vol.11】 高校野球(宮﨑政久)
キリンのひとりごと
 

「キリンのひとりごと」はオキナワグラフ(新星出版)にて連載されている法律エッセイです。弁護士法人那覇綜合(旧 宮﨑法律事務所)の所属弁護士が交代で記事を毎月執筆しています。憲法のこと、裁判員裁判のこと、沖縄の地域生活など、時節に合わせたタイムリーなテーマをとりあげながら、暮らしに関わる法律のおはなしを分かりやすく解説します。

 
【キリンのひとりごと Vol.11】 高校野球(宮﨑政久)
2011年 8月 10日(水曜日) 00:00

 

オキナワグラフ 2009年8月号掲載

 

 8月、高校野球の季節。夏の甲子園大会には、我が沖縄県からは興南高校が出場しますね。春夏連続出場で実力は十分。何度か興南野球部のみなさんを学校で見かけていますが、平素から挨拶や生活態度がしっかりしているという印象があります。沖縄大会の予選でも見せたここイチバンでの粘り強さは、平素の生活がもたらしたものでしょう。我喜屋監督の指導の成果と思いますが、このような環境に身を置くことが出来た選手は幸せだと思います。
 沖縄の高校球児すべてを代表した精一杯のプレーを期待しています。頑張って下さい。
 大会歌「栄冠は君に輝く」って、いいですよね。”雲は湧き光あふれて”の出だしと”若人よ いざ まなじりは 歓呼にこたえ”の部分は、入道雲が広がる夏空と全力で白球を追う球児の姿を思い起こさせてくれます。作詞者の加賀大介は、球児であったものの試合中のケガがもとで骨髄炎となり、右足を切断し野球を断念することとなったそうです。そんな境遇を知ると、さきの歌詞には、懸命に白球を追う姿への賞賛はもちろん、野球の素晴らしさを知る者の野球をやりたいという心の叫びがにじみ出ているように思えます。この名曲には感謝せずにはいられません。

  私、野球少年でしたから、高校野球にも熱中しました。強烈な印象で残っているのは、怪物くんこと江川卓。昭和48年の夏の甲子園、江川卓の作新学院は好投手土屋を擁する名門銚子商業と雨中の熱戦を繰り広げていました。両校無得点のまま迎えた延長12回裏、雨でぬかるんだマウンド、それでも投げ続けていた江川でしたが、1死満塁から押し出し四球でサヨナラ負けとなりました。当時8歳の野球少年には、江川卓の剛球も、雨の甲子園も、息の詰まる熱戦も、すべてが鬼気迫る強烈な印象でした。さわやかな高校野球というイメージとは少し違う、野球の凄み、飲み込まれるような迫力を覚えたように記憶しています。こんなことよく覚えているなとお思いの方もいらっしゃるでしょうが、私、本当に野球ばかりやっていました。小学校1年生の時から、夜寝るときは枕元にラジオを置いて、ラジオの野球中継を聞きながら寝るという、とても小学生とは思えないおやじな楽しみを持っていました。そのせいか、学校で習う漢字は覚えないくせに、巨人軍の選手の名前だけは背番号と一緒に漢字で書いていたと母がこぼしておりました・・・。

  大人になってからの甲子園で驚いたことといえば、平成4年、星陵高校松井秀喜の5打席敬遠で。対戦相手の明徳義塾馬淵監督が「高校生の中に一人だけプロが混じっている」と評したほど松井の力が抜きんでていたことは、現在に至るまでの彼の活躍からも十分に理解できるところです。確か、甲子園球場は騒然となり、ヤジが飛び、スタンドからモノが投げ込まれていましたね。

 この試合、実は3-2で明徳が勝利した接戦でした。ランナーのいない松井第4打席は1点差の場面。最終回の第5打席は三塁ランナーがいて、一打同点、ホームランでも出れば逆転されるところ。ましてやその打者は「一人だけプロが混じっている」という松井ですから、勝利のため明徳の作戦もあり得るものです。
 野球というのは、4つの進塁によりホームインすると1点が与えられるとして、総得点で勝負を争う点数ゲームです。攻撃側はどうやって効果的に進塁させて得点するかを考え、守備側は相手の進塁を防ぎ、点数を与えないように作戦をたてて、互いに攻防を繰り返す競技です。その中で様々なルールが定められており、打席で4つのボール(四球)となると打者には1つの無条件進塁が与えられます。守備側が故意に四球を与えることはルール違反とはされていません。つまり、守備側は、打席に強打者が立てば、あえて強打者に1つだけ無条件進塁を与えて、それ以上の進塁を防ぐのも作戦ということです。
 もちろん、強打者松井と敢えて勝負をするのも野球です。アニメ「メジャー」の主人公吾郎なら迷わず真っ向勝負でしょう。でも、作戦を駆使して勝ちにいくのも野球です。私は、ルールの中で作戦をとったことに対して、野球の競技性を超えて非難が巻き起こるのはおかしいと思ったものでした。でも今となっては、それだけではない高校野球の魅力、甲子園に対する日本人の思い入れの深さがあの議論を呼んだのかとも思っています。
 我が沖縄代表の夏の甲子園には数々の逸話があります。特筆すべきは沖縄水産高校の2年連続準優勝。毎年メンバーの入れ替わる高校野球で、2年連続で全国決勝に進むのは快挙です。名将栽監督のもと、大野倫、新里紹也と後にプロに進んだ選手が多かったのもうなずけます。
 高校野球に感動するのはなぜか。それは、ひたむきさ、一生懸命さを、隠すことなくまっすぐに見せてくれるからでしょう。高校野球でなくともそうだと思います。まっすぐなひたむきな姿を見せられたら、そりゃ誰だって応援したくなるものです。頑張っている人がいる、その姿に私たちは共感し、価値を見出していると思います。
 
 今年もまた新しい感動に触れるでしょう。

  チバリヨー、興南球児。

PDFファイルはこちらをご覧ください